広告規制・ステルスマーケティング規制対応法務(景表法・薬機法・医療広告ガイドライン)

医療・医薬品・健康産業等における法律規制・広告規制関連法務

景表法・薬機法・医療広告ガイドライン等
広告規制・ステルスマーケティング規制対応法務

ウェブサイトなどを利用して製品やサービス、キャンペーンなどの告知をする場合、それらは正確に伝える必要があり、消費者の誤認・誤解を招かないよう、様々な法律の規制の制限を受けることになります。
とりわけ、あらゆる分野の広告規制として重要なものは、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)があり、また特に医療分野に関わる広告については、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と医療広告ガイドラインに違反することがないよう注意する必要があります。
これらの法律については、法律改正により、従来よりも厳しい制約が要求されるほか、違反した際のペナルティも重いものを課されるようになっており、広告を出す際は十分に法律的な観点から検討することが必要になります。

広告規制等に関するセミナー

○ 2020年9月2日開催 【Webセミナー】 機能性食品の広告・表示規制の関連法規と留意点 ~ケーススタディで学ぶ違法・適法の判断基準と規制動向~

景表法

景表法とは不当景品類及び不当表示防止法のことであり、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することなどにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るために制定されました。製品・サービス等の広告・PRの際には、常に注意すべき法律規制といえます。

景表法の規制の要点

○優良誤認表示(5条1号)
商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示

(1)内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
(2)内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

○ 不実証広告規制
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(7条2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定される(8条3項)。

○有利誤認表示(5条2号)
商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示

(1)取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
(2)取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

○商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)

○比較広告・最高級表現

比較広告が不当表示とならないようにするためには、一般消費者に誤認を与えないようにするため、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

(1) 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
(2) 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
(3) 比較の方法が公正であること。

<問題となる比較広告の具体例>
「この機能は当社製品だけ」→実際は他社でも同様の機能を有する製品を販売していた
「実績No.1」→公正な指標により数値化したものではなく適正な比較ではなかった
「地域最安」→実際は周辺の価格調査をしておらず、根拠がなかった

 

景表法に違反した場合

景表法については、所管が従来の公正取引委員会から消費者庁に移管され、法律改正により、排除措置や課徴金納付命令などの権限が強化されました。また、違反した事業者に対しては、会社名などが消費者庁のウェブサイトに公開されることになることから、企業は信用やイメージ低下も懸念されます。

松田綜合法律事務所では、様々な企業様の広告表現について、景表法およびその他の法律との関連性も考慮したうえでリーガルアドバイスを行っております。

(1)消費者庁による景品表示法違反行為の排除措置
消費者庁は、景品類の制限や禁止規定に違反し、又は不当な表示をした事業者に対し、その行為の差し止めや、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます(これを「措置命令」といいます。)。
措置命令は、「当該行為がすでになくなっている場合においても、することができる」としています。 措置命令に不服がある場合は、不服申立て(異議申立て又は取消訴訟)をすることができますが、不服申立てをしない限り、この措置命令は確定し、確定後その命令に従わない場合、事業者の代表者等は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が、また、当該事業者は3億円以下の罰金が科せられます。

(2)都道府県による景品表示法違反行為の排除措置
平成26年6月に景品表示法が改正され、同年12月1日から都道府県知事に対して、景品表示法違反行為に対する措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限が付与されました。

(3)課徴金納付命令
平成28年4月1日から施行された改正景品表示法により、不当な表示(優良誤認表示又は有利誤認表示)を行った事業者は、課徴金対象行為に係る商品又は役務の売上額に3%を乗じた額の課徴金の納付が命ぜられます。

 

景表法に違反した事例

景表法違反者に対する措置命令・課徴金納付命令は、こちらのページから確認できます。
下記は一部事例ですが、課徴金納付が命ぜられた事例も多く、また金額も大きなものとなっています。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2019/
(消費者庁HP 景品表示法関連報道発表資料より)

2019年 H社 健康食品に係る表示 → 課徴金1581万円納付命令
2019年 A社 食品に関する表示 → 課徴金893万円
2019年 E社 自動車補修材に関する表示 → 課徴金2845万円
2019年 M社 テレビCMにおける食品に関する表示 → 課徴金2171万円
2019年 A社 新聞広告におけるサービスに関する表示 → 課徴金179万円
2018年 J社 テレビショッピングにおける価格表示 → 課徴金1534万円
2018年 G社 ウェブサイトにおける製品に関する表示 → 課徴金4598万円
2018年 T社 ウェブサイトにおける食品に関する表示 → 1313万円
2018年 A社 メニューにおける食材の表示 → 課徴金209万円
2018年 T社 自社ウェブサイト・動画広告における動画配信サービスの表示 → 課徴金1億1753万円

このように、毎年多くの企業が課徴金納付命令を受けており、 広告する場合にはマーケティング的視点だけでなく、法律的な見地から十分な検討が必要とされています。

薬機法

薬機法は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。従来の薬事法を改正し、規制対象と規制内容をより広範囲かつ明確にしたものです。

健康食品・サプリメントと薬機法

いわゆる「健康食品」「サプリメント」と呼ばれるものは、直接薬機法の規制対象とはなっていません。しかし、これらのものについては医薬品のような効能を有するかのように表示することは禁止されており、広告表現として治療や予防を効能としてうたうことはできません。

化粧品と薬機法

化粧品等の広告を行うにあたっては、薬機法等に基づき、一般消費者が適正に使用することができるよう事実に基づき正確な表現が必要となります。特に下記の要項等に配慮して、細かな点まで表現を厳しく判断する必要があります。

  • 化粧品の効能効果の表現の範囲
  • 成分及び分量又は本質ならびに原材料等の表現の範囲
  • 用法用量についての表現の範囲
  • 効能効果又は安全性を保証する表現の禁止
  • 効能効果又は安全性についての最大級の表現等の禁止
  • 効能効果の発現程度についての表現の範囲
  • 他社の製品のひぼう広告の制限
  • 医薬関係者等の推せん
  • 不快、不安、迷惑等の感じを与える広告の制限

具体的には、下記の厚労省の通達、日本化粧品工業連合会の化粧品等の適正広告ガイドラインを参照しながら、細かな表現を一つずつチェックしていきます。

○ 厚生労働省通達「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf
○ 日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン」
https://www.jcia.org/user/common/download/business/advertising/JCIA20170906_ADguide.pdf

薬機法のポイント

薬機法により、医薬品以外の商品について、広告やウェブサイトに、具体的な病気に関して治療・予防・改善に効能効果があることを表現することは禁止されています。しかし、個々の広告表現が薬機法により禁止されているのか、許容されているのかの判断は微妙なケースも多々あることから、より専門的な検討が必要です。

松田綜合法律事務所では、このような薬機法の表現方法についてアドバイスをしております。
なお、将来的には、さらなる法改正により、景表法のような課徴金制度が導入される可能性があり、その場合、現在の罰金刑よりもはるかに金額が大きな課徴金を課せられるおそれがあります。いち早く、曖昧、誇大、不正な表現を使うことなく、正確な表現に改めておく必要があります。

医療広告ガイドライン(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針)

医療広告ガイドラインは、とりわけ美容医療サービスに関してウェブサイト上の表現が行き過ぎたものが多く、消費者トラブルが多発したいた状況に鑑みて、医療サービスに関する広告規制の対象範囲を純粋な広告から医療機関ウェブサイトにまで広げ、より厳格に広告表示を規制するために通知されたものです。
患者の体験談、ビフォー・アフターの比較、医師の経歴・専門性の表記、診療科目の表記など、掲載に注意を要する項目が規制され、項目によっては掲載可能な表現が限定列挙されていますが、一方で限定解除されるケースもあり、より正確かつ公正な表現をする必要があります。

医療広告ガイドライン(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf

医療広告ガイドラインQ&A

医療広告ガイドラインQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf

上記のガイドラインおよびQ&Aは、医療広告ガイドラインをもとに、現実的な事例に基づきQ&Aとして通知されたものです。
このQ&Aには、医療広告に関する規制対象および規制内容が非常に細かく記載してあります。
しかし、事例の数が多く、また多岐にわたるうえ、専門的な理解が求められるケースがあるため、正確に理解することが難しいかもしれません。

松田綜合法律事務所では、これらのガイドラインおよびQ&Aに照らして広告の具体的な表現をチェックし、専門的かつ総合的な判断でリーガルアドバイスを行っております。

松田綜合法律事務所の広告規制法務について

松田綜合法律事務所では、様々な一般企業様の広告に関するご相談を受けております。
景表法、薬機法、医療広告ガイドラインなどの細かな規制がご不明な場合は、お気軽にご相談ください。

食品安全・食品表示関連法務

また、松田綜合法律事務所では、特に食品を取り扱う商社、食品加工会社、食品卸業者、食品製造業者、飲食店、食品小売業者、ホテル業者など多くの食品関連企業に対し、法的アドバイスを多数させていただいてきております。
このような豊富な経験を踏まえ、食品安全・食品表示関連分野について、食品業界の特殊性を十分に考慮した法的アドバイスを提供させていただきます。
松田綜合法律事務所|食品安全・食品表示関連法務

 

ステルスマーケティングに関するQA

ステルスマーケティングの規制に関し実務上問題となりそうな具体的事例について、消費者庁第7回ステルスマーケティングに関する検討会の「資料2 前回の御議論に対する考え方(事務局説明資料)」を加工してQ&Aの形に整理しました。
※各質問をクリックすると、回答が表示されます。


A1 (検討会事務局)正常な商慣習における取材活動に基づく記事の配信、書評の掲載、番組放送等においては、通常、事業者が「表示内容の決定に関与した」とはいえないことから、事業者の表示とはならない。ただし、正常な商慣習を超えた取材活動等である実態が認められる場合(対価の多寡ではなく、これまでの取引実態と比較して、事業者が媒体に対して、通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等の提供、通常考えられる範囲を超えた謝礼の支払等が行われる場合)であって、事業者が「表示内容の決定に関与した」とされる場合は、この限りではない。


A2 (検討会事務局)第三者(一般消費者や著名人)が自らの嗜好等に基づき、特定の商品又は役務について行う表示であって、第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合は、通常、事業者が「表示内容の決定に関与した」とはいえないことから、事業者の表示とはならない。ただし、事業者が第三者(著名人やインフルエンサー)に対して、当該事業者の商品又は役務について表示してもらうことを目的に当該商品又は当該役務を無償で提供するなどの結果として、当該第三者が当該事業者の目的に沿う表示を行うなどの場合は、当該第三者の自主的な意思による表示とは客観的に認められず、事業者の表示となる。


A3 (検討会事務局)第三者が事業者のSNS上のキャンペーンや懸賞に応募するための表示を行う際、当該第三者が事業者から表示内容について一切の関与を受けていない場合にあっては、第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められるため、事業者の表示とはならない。

ただし、第三者が行う特定の表示について、事業者から表示内容について一切の関与を受けていない場合であっても、その表示の前後において、事業者が第三者に対価を既に提供している、あるいは今後提供することが決まっているなど、当該事業者と当該第三者との間に当該第三者の自主的な意思による表示とは客観的に認められない関係性がある場合は、当該特定の表示は、事業者が「表示内容の決定に関与した」といえることから、事業者の表示となる。


A4 (検討会事務局)ECサイトにおける事業者(出店者)の商品等の購入者である第三者が、ECサイトにおいてレビュー機能により当該事業者の商品等の表示を行う際、当該第三者が事業者から表示内容について一切の関与を受けていない場合にあっては、第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められるため、事業者の表示とはならない。ただし、第三者が行う特定の表示について、事業者から表示内容について一切の関与を受けていないと判断されるかどうかは、その表示の前後において、事業者が第三者に対価を既に提供している、あるいは今後提供することが決まっているなど、当該事業者と当該第三者との間に当該第三者の自主的な意思による表示とは客観的に認められない関係性がある場合である。


A5 (検討会事務局)事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して表示をさせる場合は、事業者の表示となる。ただし、アフィリエイターの表示であっても、事業者とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、事業者の表示とはならない。


A6 (検討会事務局)前述のとおり、アフィリエイトプログラムを利用した広告を用いる事業者が、アフィリエイター等に委託して「お友達紹介キャンペーン」と称して広告を作成させた場合には、事業者の表示となる。そのため、アフィリエイターが、インターネット上やSNS上に商品・サービスを勧めるメッセージ等を表示した場合も、事業者の表示となる。ただし、家族等のごく一部の身近な人にのみに向けられたものであり、一般消費者に向けられたものとは認められない実態があれば、景品表示法上の問題とはならない。


A7 (検討会事務局)事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示(比較サイトやポイントサイトにおける表示等も含む)を行う際に、アフィリエイターに委託して、当該事業者の商品又は役務について、表示をさせる場合であっても、事業者の表示となる。他方で、アフィリエイターの表示であっても、事業者とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、事業者の表示とはならない。


A8 (検討会事務局)事業者が仲介事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、当該事業者の競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した低い評価を表示させる場合は、事業者の表示となる。

A9 (検討会事務局)前述のとおり、正常な商慣習における取材活動に基づく記事の配信、書評の掲載、番組放送等においては、通常、事業者が「表示内容の決定に関与した」とはいえないことから、事業者の表示とはならない。ただし、正常な商慣習を超えた取材活動等である実態が認められる場合(対価の多寡ではなく、これまでの取引実態と比較して、事業者が媒体に対して、通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等の提供、通常考えられる範囲を超えた謝礼の支払等が行われる場合)であって、事業者が「表示内容の決定に関与した」とされる場合は、この限りではない。

相談事例


A10 
1 ステマ規制の概要

内閣府は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であるとみとめられるもの」を景表法第5条第3号の規定に基づく表示と指定し、当該表示が禁止されるに至りました。これが、いわゆる、ステマ規制になります。

2 「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」についての考え方

告示の対象となるのは、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に該当することが前提となります。そのため、外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合を指すと解されています(令和5年3月28日付「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」消費者庁長官決定(以下「運用基準」といいます。)第2参照)。

3 ご相談に対するご回答

まず、前提として、従業員による投稿が会社の指示の下行われる場合、その投稿の内容は、会社が指示を出している以上、表示内容の決定に関与していると認められるので、「事業者が表示内容の決定に関与したと認められる」場合にあたります。
次に、会社の指示に基づくものではなく従業員が自社商品を個人SNSで投稿した場合について検討します。運用基準では、仮に従業員個人のSNSであったとしても、「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」も事業者が表示内容の決定に関与したものと解しています。
さらに、運用基準では、「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」に該当するか否かについては、従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえて、事業者が表示内容の決定に関与したかについて総合的に考慮し判断されます。その判断にあたっては、以下の場合が考えられます。
商品の販売を促進することが必要とされる地位や立場にある者(例えば、販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等)が販売促進するための表示(商品をアピールするような表示)は、「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」に該当します。
他方、当該商品又は役務の販売を促進することが必要とされる地位や立場にない者が、当該商品又は役務に関して一般消費者でも知り得る情報を使うなどし、当該商品又は役務の販売を促進する目的ではない表示を行う場合は、「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」に該当しません。

上記を踏まえて、Q1に戻りますと、
(i)そもそも、貴社の指示に基づいて、SNS上に投稿をさせる場合は、いかなる立場の者による投稿でも、違反となります。
(ii)個人の投稿であっても、当該社員が販売促進を求められる地位にある者である場合、基本的には貴社の商品をアピールする投稿は避けた方が安全です(ただし、そもそも貴社の広報担当であることを明示したアカウントに基づく投稿であれば、貴社による表示であることが明確となるので、問題ありません。)。
(iii)他方、販売促進を求められる立場にない社員が、一般消費者でも知り得る情報を使うなどした個人の投稿(例えば、「今日●●で食事をしてきた!●●おいしかった!」といった投稿)であれば、基本的には違反とはなりません。


A2 上記のとおり、「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」も事業者が表示内容の決定に関与したものと解しています。
そのため、グループ会社の従業員による投稿についても、判断基準としては同様で

(i)そもそも、貴社の指示に基づいて、SNS上に投稿をさせる場合は、いかなる立場の者による投稿でも、違反となります。
(ii)個人の投稿であっても、当該社員が貴社の又はグループ店舗全体の販売促進を求められる地位にある者である場合、基本的には貴社の商品をアピールする投稿は避けた方が安全です。
(iii)他方、販売促進を求められる立場にない社員が、一般消費者でも知り得る情報を使うなどした個人の投稿(例えば、「今日●●で食事をしてきた!●●おいしかった!」といった投稿)であれば、基本的には違反とはなりません。


A3 結論としては、ステマ規制に反する可能性があります。

上記のとおり、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であるとみとめられるもの」は、いわゆるステルスマーケティングとして禁止されています。そして、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」に該当するかどうかは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかどうかで判断されます。

Q3の事案は、会社において、文案は提供するものの、実際に投稿するか否かはユーザーに委ねられており、かつ、直接的にSNS投稿自体に対して報酬を支払う訳でもありません。このような場合でも事業者が表示内容の決定に関与したと評価できるのかが問題となります。
この点、運用基準では、「事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても」表示内容の決定に関与したと評価されうることが示されており、そのうえで、事業者が表示内容の決定に関与したか否かは最終的には総合考慮で判断するとしています。
加えて、事業者が表示内容の決定に関与したと判断される例として、運用基準では、「事業者が第三者に対して自らの商品又は役務について表示することが、当該第三者に経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたり…、言動から推認させたりする…などの結果として、 当該第三者が当該事業者の商品又は役務についての表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合」等があげられています(運用基準第2の1?イ(イ)参照)。

Q3の事案において、会社は、ユーザーに対して、リンクを割り付け、当該リンクを経由して誰かがサービスを申し込んだ場合には、ユーザーに対して、プレゼントを贈る構造となっています。そうだとすると、会社は、確かにユーザーに対して、直接的に金銭を支払って、SNSへの投稿を依頼したわけではありませんが、ユーザーがSNSへ投稿することで結果的に、経済上の利益を受け取ることができる仕組みを構築しています。

さらに、会社はユーザーがSNSに投稿をしやすいように会社サービスの説明文を提供しているところ、通常、ユーザーが自身の利用しているサービスの紹介文を考えることは、煩雑な作業です。そのため、ユーザーとしては、流用できる文案があるのであれば、それを使用することが心理的に自然です。すなわち、ユーザーは、会社の提供している文案を利用してSNS投稿をすることで楽に経済上の利益を得る可能性を獲得できるのであるから、その文案を基にSNS投稿を行う可能性が高いといえます。そうだとすると、ユーザーによるSNS投稿の内容決定については、ユーザーの「自主的な意思によるもの」とは認められない可能性があります。

そのような認定を受けた場合には、当該ユーザーによるSNS投稿は、会社が表示内容の決定に関与したと判断されることとなりますので、ステマ規制違反に該当する可能性が高くなります。

 

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