Legal Note

リーガルノート

2021.06.02

2021-5-2 営農型太陽光発電の概要

M&P Legal Note 2021 No.5-2

営農型太陽光発電の概要

2021年6月2日
松田綜合法律事務所
農業関連法務チーム
弁護士 菅原清暁

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*本ニュースレターは2021年5月31日現在の情報に基づいております。

1.はじめに

少子高齢化・人口減少に伴い、農地面積や農業就業者数も減少の一途をたどっており、将来的な農業の生産基盤の維持困難・脆弱化が懸念されています。

また、地球温暖化等による極端な気象現象の発生が危惧される中、平成28年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を受け、省・再生可能エネルギーの推進や循環型社会の構築が求められています。

これらの課題に対する打開策の1つとして、「営農型太陽光発電」という新たな農業・発電のスタイルに注目が集まっており、令和元年6月21日閣議決定の成長戦略フォローアップ[1]及び令和2年7月17日閣議決定の成長戦略フォローアップ[2]において全国展開を図ることとされているほか、令和3年5月に農林水産省が取りまとめた、日本の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための戦略である「みどりの食料システム戦略」[3]においても、具体的な取り組みとして営農型太陽光発電等による地産地消型エネルギーマネジメントシステムの構築が真っ先に挙げられています。また、実際にも、営農型太陽光発電の取組面積・設備設置のための農転用許可の件数は大幅に増加しています。[4]他方で、営農型太陽光発電導入に伴う留意点を理解しないまま導入が進められトラブルが発生してしまうケースや、不適切な業者による違反転用により市町村が苦慮するなど関連する問題も発生しているようです。

そこで、本ニュースレターにおいて営農型太陽光発電の概要について説明するとともに、問題がある営農型太陽光発電が導入されたり、営農型太陽光発電が悪用されることのないように、次回以降のニュースレターにおいて、営農型太陽光発電に取り組む際の法的注意点についてご説明する予定です。これらのニュースレターを通じて、多くの方に営農型太陽光発電の制度や抱える問題が正しく理解され、本制度が悪用されることなく、「農業者の収入拡大による農業経営の更なる規模拡大」という本来の目的に叶う導入が進められることを期待します。

2.営農型太陽光発電とは

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、「農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取組」[5]とされています。

つまり、農地に壁のない支柱のみを立てたうえで、農地の上部に太陽光発電設備(太陽光パネル)を設置しつつ発電設備の下の作業スペースを確保し、太陽光発電と並行して農作業を行うことを確保できるようにした農業生産・発電モデルのことを指します。

営農型太陽光発電においては、太陽光発電設備下での農作業による作物の販売収入を従前どおり確保しつつ、加えて農地上部の太陽光発電設備により発電した電力を電力会社等に販売したり自家利用したりすることにより、農業経営者の収益改善・向上につなげることが見込まれています。

また、営農型太陽光発電を活用しながら荒廃農地を活用することや、営農型太陽光発電を行っている農地を災害時の発電拠点とすること等を通じて、農業経営者本人の収益だけでなく、近隣地域の活性化に貢献することも期待されています。

 

(実施例)[6]

3.営農型太陽光発電に対する助成等

営農型太陽光発電には前記のとおり収益改善・向上や地域活性化といったメリットがあるものの、これを実施するための発電設備の導入や導入時・導入後の体制整備のためには相応の費用を必要とし、農業経営者が自らこれらを負担して導入することは躊躇されるケースもあります。

また、太陽光発電設備の導入後に電力会社等に売電しようとしたときに、買取価格が低くなってしまった場合、投資した金額の回収が困難となり、かえって農業経営者の収益が悪化する懸念もあります。

そこで、営農型太陽光発電を含めた農業分野における再生可能エネルギーの推進のため、政府・行政当局や地方自治体、金融機関が以下のような助成等を実施しており、営農型太陽光発電の導入がしやすい環境を整えています。

 

(1)地域資源活用展開支援事業及び営農型太陽光発電システムフル活用事業

農林水産省は、「農山漁村における再生エネルギーの導入促進のための予算措置等」として、地域資源活用展開支援事業と営農型太陽光発電システムフル活用事業の2つを展開しています。[7]

 

ア 地域資源活用展開支援事業

地域資源活用展開支援事業は、地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入を推進するため、相談対応や出前指導、関連事業者とのマッチング等の取組、先進事例やノウハウをシェアリングする取組を支援するものです。

再生可能エネルギーに関心のある農林漁業者の課題解決を支援する新規開拓型、農林漁業者と関連事業者のマッチングや地域の体制構築を支援する発展サポート型、他地域での課題解決や導入促進に向けた環境整備を支援する先進情報バンク活用型の3つに分類されます。

農業経営者は、これらの支援を受けながら、営農型太陽光発電に取り組むことが出来ます。

 

イ 営農型太陽光発電システムフル活用事業

営農型太陽光発電システムフル活用事業は、営農型太陽光発電で発電した電気を自らの農業経営の高度化に利活用し、営農型太陽光発電のメリットを営農面でフルに活用するためのモデル構築を支援するものです。

営農型太陽光発電の設備下部で、電気を利活用しつつ、電動農業機械等を導入する取組を対象とした実証調査を行い、この結果を踏まえ、電気の利活用に当たっての課題と対応策を整理し、営農型太陽光発電のメリットを営農面でフル活用するモデルを構築します。

この事業の対象となった場合、農業経営者は、実証に必要な人件費や旅費等(ソフト)、農業機械や電気の自家利用のための設備等の経費(ハード)について、最大で631万5000円[8]の補助を受けることができます。ただし、発電そのものの経費(太陽光パネル・架台設備等)は対象にならないことに注意が必要です。

 

(2)電気の固定価格買取制度(FIT制度)の適用

営農型太陽光発電により得た電気について、電気の小売供給等を行う電力会社等に販売する場合、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「FIT法」といいます。)に基づき、経済産業省から土地の確保・分割禁止・設備の決定・接続同意・保守点検及び維持管理・設備の廃棄・関係法令の遵守・地域活用要件(災害時利活用の可能化。発電規模が10~50kWの場合)といった基準を満たした事業計画の認定[9]を受けることにより、発電設備の規模に応じて、一定期間[10]電力会社等に対して市場価格よりも高い固定価格[11]で売電することが可能です。これを、固定価格買取制度(FIT制度)といいます。

これにより、売電による収益が予測可能となり、営農型太陽光発電による収益が安定的に得られることになります。

ただし、運転開始期限が設定されており、原則として認定日から3年以内に営農型太陽光発電事業を開始する必要があり、これを超過した場合にはその分固定価格で売電できる期間が短くなるほか、運転開始期限から1年を経過して運転開始に至らなければ認定が失効することになります。

なお、2022年度4月1日からは、改正FIT法の施行により、固定価格(FIT)だけでなく、市場連動型のFIP制度も導入され、固定価格よりも市場価格が高いような需要ピーク時にも発電・売電を行って電気供給量を増やすインセンティブをもたらし、太陽光発電が一層促進されることが期待されています。

(FIT制度とFIP制度)[12]

(3)その他地方自治体の支援・金融機関の支援[13]

以上のほか、地方自治体によっては営農型太陽光発電に関して支援事業の実施や補助金・支援資金の支給を行っているところもあります。

また、農林中央金庫や各都道府県の信用農業協同組合連合会、農業協同組合、その他信用金庫や銀行等の金融機関においても、営農型太陽光発電事業に対する低金利での融資策の実施等の支援が行われています。

[1] https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf

[2] https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2020.pdf

[3] https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/team1-143.pdf

[4] 農林水産省「令和元年度 食料・農業・農村の動向」によると、平成30年時点での累計の営農型太陽光発電の取組面積は560ha、設備を設置するための農地転用許可件数は1992件と、平成28年の2倍弱にまで上っている。

[5] 農林水産省「営農型太陽光発電について」より

[6] 農林水産省「営農型太陽光発電について」より

[7] 令和3年度公募は、いずれも既に終了しているので留意されたい。

[8] 令和3年度公募の場合。

[9] 資源エネルギー庁「事業計画認定ガイドライン(太陽光発電)」も参照

[10] 発電設備の規模が10kW未満の場合10年間、10kW以上の場合20年間。

[11] 2021年4月現在、2021年度の1kWh当たりの調達価格は、発電設備の規模が10kW未満の場合は19円、10kW以上50kW未満の場合は12円、50kW以上250kW未満の場合は11円、250kW以上の場合は入札制度による。

[12] 経済産業省資源エネルギー庁「再生可能エネルギー固定価格買取制度等ガイドブック2021年度版」より

[13] 農林水産省「2020年度版 営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」参照


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この記事に関するお問い合わせ、ご照会は以下の連絡先までご連絡ください。

松田綜合法律事務所
農業関連法務チーム
弁護士 菅原清暁
info@jmatsuda-law.com

 

この記事に記載されている情報は、依頼者及び関係当事者のための一般的な情報として作成されたものであり、教養及び参考情報の提供のみを目的とします。いかなる場合も当該情報について法律アドバイスとして依拠し又はそのように解釈されないよう、また、個別な事実関係に基づく日本法または現地法弁護士の具体的な法律アドバイスなしに行為されないようご留意下さい。


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