M&P Legal Note 2020 No.12-1
同一労働同一賃金に関する最高裁判決(速報)
2020年11月1日
松田綜合法律事務所
労務チーム
1 はじめに
2020年10月13日、同月15日と、立て続けに同一労働同一賃金に関する判断を示した最高裁判決が出されました(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便(東京)事件、日本郵便(大阪)事件、日本郵便(佐賀)事件という5つの最高裁判決が出されています。)。
これまでにも同一労働同一賃金に関する相談は当事務所にも寄せられていましたが、これらの最高裁判決は世間の注目も集めており、今後、より一層同一労働同一賃金に関する相談が増加することが予想されます。
そこで、本稿では、上記各最高裁判決において示された判断を、後記のとおり、簡潔にまとめました。
このうち、非正規労働者には賞与及び退職金を不支給とするという待遇差につき、最高裁が、原審の判断を覆した上で不合理な相違とはいえないと判断したことについては、使用者には有利な内容といえます。もっとも、当該待遇差が不合理であるか否かについては、個別の事案ごとに検討する必要があり、結論のみを取り上げて、賞与及び退職金については待遇差を設けることが許されると安易に整理することはできません。
また、祝日給、扶養手当に関する待遇差については、原審よりも使用者に厳しい判断をし、不合理な待遇差であるとされています。
どのような待遇差であれば不合理と判断されないかという点については、当該手当や休暇等が設けられている趣旨を正確に捉えた上で、パートタイム・有期雇用労働法でも示されているとおり、①職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を踏まえ、個々の待遇差ごとに慎重に検討する必要があります。
同一労働同一賃金に関する具体的なご相談につきましては、末尾記載の連絡先までご連絡を頂戴できますと幸いです。
2 同一労働同一賃金に関する最高裁判決における判断
事件名 | 原告の職種 | 問題となった待遇 | 判断 |
大阪医科薬科大学事件(最三小判令和2年10月13日) | 主に薬理学教室内の秘書業務に従事するアルバイト職員 | ・賞与
(支給の有無) |
正社員と職務内容等に一定の相違があることから、賞与の不支給は、不合理とはいえない。 |
メトロコマース事件(最三小判令和2年10月13日) | 東京メトロの駅構内の売店における販売業務に従事する契約社員 | ・退職金
(支給の有無) |
正社員と職務内容等に一定の相違があることから、退職金の不支給は、不合理とはいえない。 |
日本郵便(東京)事件(最一小判令和2年10月15日)
日本郵便(大阪)事件(最一小判令和2年10月15日) 日本郵便(佐賀)事件(最一小判令和2年10月15日) |
郵便外務事務(配達等の事務)又は郵便内務事務(窓口業務、区分け作業等の事務)に従事する契約社員 | ・年末年始勤務手当
(支給の有無) ・祝日給 (支給の有無) ・扶養手当 (支給の有無) ・病気休暇 (有給か無給か) ・夏期冬期休暇 (付与の有無) |
正社員と職務内容等に相応の相違があることを考慮しても、左記の待遇差(手当の不支給や休暇を与えないこと等)は不合理である。
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人事・労務チーム
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