医療法人を取り巻く法律問題は多種多様です。例えば、医療法人内部では、その支配権をめぐる問題、労務管理の問題、患者情報管理の問題などが挙げられます。医療法人の外部では、カスタマーハラスメントなどの患者とのトラブル、外部委託先やテナントビルのオーナーなどの取引先とのトラブルが挙げられます。さらに、医療法人のM&Aも、昨今、活発に行われています。
弊所には、医療経営士1級の資格を有する弁護士や、人事・労務管理を多数取り扱う弁護士などが在籍しており、医療法務全般について、ご相談事案ごとに適切なメンバーが対応させていただきます。
医療法人を取り巻く主なリスクと法務サービスの全体像
サービス内容
医療法人の労務管理
◎ 医療法人を取り巻く状況
医療法人において、職員の労務管理は極めて重要な経営課題のひとつであり、これを怠ると、その基盤となる医療の安全性が崩れてしまいます。労務管理といっても、医師の働き方改革(時間外労働の上限規制、健康配慮措置など)への対応、医師・看護師の仮眠時間・宿日直勤務・深夜勤務による未払残業代リスクへの対応、医療体制やチームワークを乱す問題職員へ対応、ハラスメントのない職場づくりなど、課題は多数存在します。
弊所では、医療法人側の立場で、これらの課題解決を行っていくことで、労務管理の面からをサポートさせていただきます。
- 労働時間管理方法の監査/改善アドバイス
- 就業規則/賃金規程等の改定
- 問題職員への注意指導や懲戒処分のアドバイス
- ハラスメント研修
- ハラスメント相談窓口の担当
患者とのトラブル対応
◎ 医療法人を取り巻く状況
医療法人と患者間の信頼関係は、ひとたび溝が生まれてしまうと、重大なトラブルに発展することがあります。例えば、患者や家族による不当な要求により医師・看護師が多大な精神的負担を被るケース(カスタマーハラスメント)、患者によるSNSや口コミサイト上の誹謗中傷・ネガティブコメント、患者や家族による医療費の滞納などがあります。これらは、人材流出や患者離れなど、医療法人の経営に直接的な影響を生じさせます。医療費の滞納も、ひとつひとつは少額にとどまるとしても、医療法人の収入にかかわることであるため、毅然とした対応が必要です。
弊所では、このようなトラブルにも、法的側面でのサポートをさせていただきます。
- カスタマーハラスメントの体制整備
- カスタマーハラスメントを行う患者への対応サポート、交渉代理
- カスタマーハラスメント研修の実施
- 誹謗中傷対応に関する法的アドバイス
- 発信者情報開示請求/削除仮処分の申立て等の代理
- 未払医療費に関する弁護士名義での催告、支払督促や訴訟対応等
医療法人のガバナンス
◎ 医療法人を取り巻く状況
医療法人は、社員一人が一議決権を持っているため、医療法人の経営支配権をめぐって、理事長や理事の地位に関する争いや、社員総会及び理事会における決議の有効性に関する争いなどが起きやすいといえ、紛争予防のための方策が必要です。
持分のある社団医療法人は、社員の退社時の多額の出資持分の払戻しにより法人の経営が困難になりかねず、また、出資持分に対する高額の相続税の問題があります。このような課題の解決策として、持分のない社団医療法人へ移行することが考えられます。
新薬などの開発に関して設置が義務付けられている治験審査委員会や、医学研究や臨床の場面で生じる倫理的問題を扱うために設置が求められる倫理委員会へ、法律学の専門家である外部委員の出席が求められています。
- 理事会決議・社員総会決議の有効性に係る紛争・訴訟対応
- 理事の退職慰労金請求・出資金返還請求に係る紛争・訴訟対応
- 医療法人の経営支配権争いに伴う分割・事業譲渡に係る対応
- 持分のない社団医療法人への移行手続のサポート
- 倫理委員会・治験審査委員会の委員就任
- 規定類の作成
- 医療法人の新規事業の法令適合性の検討
情報管理・広告規制
◎ 医療法人を取り巻く状況
医療法人は、患者のプライバシー権保護のため、患者の病歴や病状、治療経過等について守秘義務を負っており、情報セキュリティ体制の整備及び運用が必要です。
医療法人に関する広告は、法律により広告が可能とされている事項に限られるほか、虚偽広告や比較広告、誇大広告等が禁止されています。
広告規制の詳細につきましては、弊所のヘルスケア・ヘルステック法務のページをご参照ください。(https://jmatsuda-law.com/lp/health-business/)
- 情報管理規程類・書面の整備
- 職員を対象とする情報セキュリティ研修の実施
- サイバーセキュリティ管理体制の構築、サイバーインシデントへの対応
- 患者・家族からのカルテ・レセプト等の開示請求、警察・官公署等からの診療情報開示依頼に係る対応
- 広告の法令適合性の検討
取引先等に係る対応
◎ 医療法人を取り巻く状況
医療法人のIT化に伴うシステム開発などのベンダーへの委託、医師・看護師の採用に関する人材紹介会社の利用、コスト削減のための医療法人内業務の外部委託など、昨今、医療法人が外部の取引先と関わる機会が増加しています。このような中でトラブルに発展することもあるため、紛争予防に向けた対策を講じておくことが必要です。
近年の都市部における地価高騰により、診療所などが入居するテナントビルのオーナーから賃料増額請求を受けるケースも増えており、専門的な意見を踏まえた対応が必要です。
弊所では、このようなトラブルにも、法的側面でのサポートをさせていただきます。
- システム・べンダーとのシステム開発・運用・保守契約の作成・交渉支援及びシステム開発・導入に係る紛争の解決・訴訟対応
- 人材紹介会社や業務委託先との契約の作成・交渉支援及び取引上のトラブルに係る紛争の解決・訴訟対応
- 賃料増額請求に係る調停・訴訟対応
過去の実績例(弊所において取扱った事案のご紹介)
弊所には医療法人における幅広い実績がございます。
事例1 医療法人の内部紛争に係るガバナンス対応
診療所を運営する医療法人において理事長と理事との間でトラブルが発生し、診療所の土地建物に関する明渡請求などの訴訟提起やMS法人の代表者に関する仮処分の申立などが行われ、裁判所における法的紛争に発展しました。このような状況の中、医療法人の社員たる立場も有する理事側が、出資持分払戻請求権の債権者の立場で、債務超過を理由とした破産手続開始決定の申立(債権者申立)を行うなど、法的紛争が拡大し、内部分裂ともいえる状況になりました。弊所では、このような複雑化した内部紛争に関して、代理人の立場で、ひとつひとつの紛争を細かく処理しながら解決に導きました。
医療法人の内部紛争が顕在化した状況の中では、社員総会や理事会も緊迫した場であるため、弊所の弁護士が同席し、議事進行や動議への対応など訴訟外のサポートも行わせていただきました。
事例2 医療法人の解雇事案に関する訴訟対応・労務管理の見直し
病院の職員に対する解雇の有効性が争われた労働訴訟において、医療法人側で訴訟代理を行い、解雇に至る経緯や解雇理由を詳細に主張立証し、徹底的に争いました。その結果、裁判所において、医療法人の意向を十分に汲んだ訴訟指揮を行っていただくことができました。
また、労働訴訟に至った件をきっかけに、医療法人内部の労務管理の見直しを行わせていただき、就業規則・賃金規程の見直し、賃金体系の改善、労働時間管理方法の改善、宿日直勤務の許可申請へのアドバイスなどの労務管理の全般的な見直しにも対応いたしました。
事例3 病院及び診療所の第三者への事業継承の支援
後継者不在に悩む医療法人様(持分あり社団医療法人・持分なし社団医療法人・財団医療法人全てについて実績があります)の第三者への事業承継において、譲渡対価の確実なお受取り、職員の雇用継続や承継後の売り手の競業避止義務の問題等の解決に配慮しつつ、事業承継契約の作成及び買い手との交渉の支援等をさせていただきました。
また、事業承継実行後に、理事の皆様が役員退職慰労金を受け取れずに困っておられたケースでは、買い手に対する退職慰労金請求訴訟の代理をお引き受けし解決しました。
医療法務に関連するセミナー
■医療機関の法務リスクへの実務対応セミナー(全4回)
第1回「医療機関のM&Aにおける売り手の留意点」
・医療機関のM&Aにおける売り手のメリット
・医療機関のM&Aの特徴
・医療法人の類型とM&Aスキーム
・最終契約における売り手の主な留意点
・医療機関のM&Aにおいて弁護士がお手伝い できること
第2回「医療機関における労務管理の実務対応~安全な医療体制の確保のために~」
・医師の働き方改革への実務対応
・残業代リスクへの実務対応
・問題職員への実務対応
・ハラスメントへの実務対応
第3回「徹底解説!事故を起こさないための医療広告ガイドラインへの対応と実務」
・医療広告の特殊性(限定解除とは?)
・医療広告ガイドライン上、禁止される広告の概要
・ビフォーアフター写真は使用できる?
・お客様の声は紹介できる?
・インフルエンサーを起用した広告はできる?
第4回「医療機関の風評被害・口コミ対策」
・風評被害・口コミ被害の実態
・削除請求・発信者情報開示請求
・どのような表現が問題となるのか
・事例解説
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