Legal Note

リーガルノート

2025.07.16

2025-7-1 改正法施行から2年―不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の現況と企業の対応-②

M&P Legal Note 2025 No.7-1

改正法施行から2年―不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の現況と企業の対応-②

2025年7月⑱日
松田綜合法律事務所
企業刑事法務チーム
弁護士 勝俣 安登武

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今回は、前回に引き続き不同意性交等・不同意わいせつ罪について解説します。前回【 https://jmatsuda-law.com/legal-note/2025-6-1/ 】は、法改正からの認知・検挙数の推移を概観しつつ、改正内容のおさらい等をしてきましたが、今回は、企業において想定される事例やその際の対応の注意点等について解説をしたいと思います。

5 企業において想定される事例

企業において不同意性交等罪、不同意わいせつ罪が問題となりうる場合としては、大きく分けて下記のとおり①社内関係者間の事案、②私生活上での事案とが想定されます。

①社内関係者間の事案の例

上司部下の関係性、懇親会等でアルコールを摂取した機会が典型的な事案として見られます。

  • 社内関係者が出席する懇親会の際又は帰路等におけるわいせつ行為の事案
  • セクシュアルハラスメントがエスカレートし身体的な接触等を伴った事案
  • 物品を介したわいせつ行為の事案

②私生活上での事案の例

  • SNSやマッチングアプリ等を通じた私的な交際関係における事案
  • 電車、路上等での痴漢行為の事案

6 対応と難点

例えば、企業の役職員が上記のような不同意性交等、不同意わいせつ罪により、逮捕、立件されるようなこととなった場合や、そのような行為が行われた旨の公益通報があったような場合には、企業としても、事実調査の上、当該役職員の、解任、懲戒処分等のほか、これが社内関係者同士の事案であれば、被害者のケア、被害者から会社に対する損害賠償請求(使用者責任)への対応、再発防止策の策定といった様々な対応が迫られます。また、場合によってはマスコミ対応も必要となります。

しかしながら、これらの対応には主に下記のような難点があり、これを企業独自に対応するということは必ずしも容易ではありません。

(1)  事案の見通しの難しさ

企業としては、この種事案が発生した場合には、速やかに事案の見通しを把握し、事案の着地点を見据えながら対応していく必要があります。例えば、役職員が逮捕されるのかどうかの見定めは、マスコミ対応に当たっては極めて重要ですし、そのほか、役員の解任・従業員の懲戒解雇や、被害者への損害賠償の対応についても、仮に、その後に訴訟になった場合まで想定して対応する必要が生じます。これらの見通しが甘く、後手後手になればなるほど、事態の収束は困難になっていきます。

しかしながら、この種の事案は被害者の供述の信用性の判断など、事実認定が難しい事案が多い上、また、ほとんどの企業にとっては過去の対応の経験もなく、専門家の助力なしに事案の見通しをつけることは容易ではありません。

(2)  事情聴取の難しさ

関係者からの事情聴取は、一見、話を聞くだけであり誰にでもできそうにも思われますが、適切な事実認定を行うには、情報量も十分に得なければなりません。また、供述の任意性、信用性を確保しながら事情聴取を行っていく必要もあり、実際には非常に技術を要する作業です。特に不同意性交等罪、不同意わいせつ罪の事案では、加害者・被害者双方の供述の信用性の吟味が重要となる上、さらに、聞き漏らし等があったために事情聴取の回数が複数回に及ぶと被害者の二次被害につながってしまうおそれがある点にも注意が必要です。

この種の事案で企業独自に事情聴取が実施された場合によく見られる失敗例としては、経緯、犯行状況などの事実関係について詳細かつ具体的な掘り下げが不十分であったり、客観的な証拠と結びつけられる情報が不足しているなどの聞き取り不足があるもの、初回の聴取で十分な情報が得られない中で被害者から再度の事情聴取を断られてしまうといったものや、証拠を用いての聞き取りが不十分であるといったものなども見られます。また、聴取に際して過度な誘導尋問などの不適切な質問の方法がされたり、聴取対象者の精神的負担への配慮が十分でなく、その供述の証拠としての利用価値を下げてしまいかねない状況も少なからず見られます。

(3)  証拠収集の難しさ

不同意性交等や不同意わいせつの行為は、加害者と被害者が一対一の状況、密室で行われることも多く、目撃者といった第三者がいない点で、どうしても言った言わないの水掛け論になりがちです。そのため、関係者の供述だけでなく、物的・客観的な証拠から確実に認定できる事実を整理していかなければ、適切な事実認定をすることができません。

もっとも、どのような証拠を得るべきか、また、得られるのかという点は事案によっても様々です。加えて、実際に刑事事件や民事訴訟においてどのような証拠が用いられ、有効なものと評価されているのかという点への知識がなければ、適切な証拠収集を行うことはできません。しかも、証拠は時間とともに散逸していってしまうため、発生直後からスピーディーに対応する必要があるところも難点の一つといえます。

7 弊所企業刑事法務チームの強み

弊所企業刑事法務チームは、元検察官の経験からこの種の犯罪について熟知し、かつ、弁護士としても多数の企業のリスクマネジメント案件に携わってきたメンバーで構成されており、上記のような難点のある事案につきましても、的確かつスピーディに対応することができます。

検事として培った事情聴取・証拠収集のスキルはもちろんのこと、マスコミ対応、訴訟を見据えた対応も多数取り扱っており、この種の事案の対応ついて強力にサポートします。また、必要に応じて専門業者とも連携の上、携帯電話機といった端末の解析等の調査により、重要な客観的証拠の収集、保全もスムーズに行うことができるほか、弊所労働法務チームとも連携し、従業員に対する懲戒手続まで含めて手厚くカバーしております。

この種の事案は、なにより初動対応のスピードが重要ですので、お困りの際は、まずは一度、お気軽にご相談をいただければと思います。

 

以上、2回にわけて不同意性交等・不同意わいせつ罪にフォーカスして解説をしてまいりました。本罪については今後も積極的な取締が継続する可能性があり、今後の動向が引き続き注目されます。

企業刑事法務チームでは、これからも、このように企業の皆様にも関係する刑事事件にまつわるトピックを扱ってまいりますので、ぜひ、引き続きご覧いただけますと幸いでございます。

以上

 

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