M&P Legal Note 2025 No.5-2
25年6月改正法成立 全企業にカスハラ対策を義務付け~違反の場合は社名公表も~
2025年6月20日
松田綜合法律事務所
弁護士 山口陽子
昨今深刻な社会問題となっているカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)から労働者を保護するため、2025年6月4日、カスハラ対策を全ての企業に義務付ける改正労働施策総合推進法(以下「改正法」といいます)が成立しました。
改正法は2026年中に施行される見込みです。
松田綜合法律事務所では、カスハラ対応法務チームを設置し、顧客対応経験を持つ弁護士が現場感覚と法的知識を活かしたサポートを提供しています。改正法に基づくカスハラ対策として、基本方針の策定や社内規程の整備、マニュアルの作成、研修の実施などの支援を行うとともに、個別のカスハラ事案に関する法的アドバイスも行っています。
1.カスハラの定義
改正法では、カスハラは次のように定義されました。
①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他事業に関係を有する者の言動であって
②労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの
➂労働者の就業環境が害されること
2.事業者の責務
改正法において、事業主はカスハラから労働者を守るため、「雇用管理上必要な措置」を講じることが義務付けられています。また、労働者からのカスハラ相談に適切に対応できる体制の整備が求められるとともに、相談した労働者に対する不利益な取扱いは禁止されています。さらに、労働者が他の事業主の労働者に対しカスハラを行わないよう、研修の実施などの配慮が必要とされています。
3.雇用管理上必要な措置
事業主が講ずべき雇用管理上必要な措置の具体的な内容については、今後、厚生労働省が告示として定める「指針」により示される予定ですが、次のような内容が盛り込まれることが予想されます。
- カスハラ対応方針の明確化とその周知
- 社内相談窓口の設置
- カスハラ発生時の対応マニュアルの策定
- 従業員への教育・啓発
4.違反した場合
企業が雇用管理上必要な措置をとっていない場合、行政による助言、指導、勧告を受ける可能性があります。さらに、勧告に従わない場合には、企業名が公表されることもあります。
5.まとめ
全ての企業は、2026年の改正法施行までに社内体制を整備し、カスハラ対策を講じる必要があります。具体的な対応については、今後公表される厚生労働省の指針に留意しながら慎重に検討することが求められます。
以上