M&P Legal Note 2021 No.11-2
中国向け輸出食品の製造企業登録に係る規制について
2021年11月29日
松田綜合法律事務所
中国弁護士 徐 瑞静
1 はじめに
中国税関総署は、2021年4月13日に、輸入される食品の製造等を行った外国企業の登録を求める「輸入食品国外製造企業登録管理規定」(税関総署令第248号)(以下、「管理規定」という。)を公布し、2022年1月1日に実施すると発令しました。管理規定の実施に伴い、2022年1月1日までに、税関総署において企業登録が完了していることが必要です。以下において、関連内容について述べたいと思います。
2 管理規定の概容
(1)輸入食品の国外製造企業の登録対象の拡大
従来、輸入食品登録は、「輸入食品国外製造企業登録実施目録」に掲載された品目を製造する企業のみが、その申請を必要とされていましたが、2022年以降、中国に向けて輸出するすべての食品の製造、加工、貯蔵企業(食品添加物、食品関連製品の製造、加工、貯蔵企業は除く)の登録の申請が義務づけられ、それにより、登録の対象となる企業が拡大されることになりました(管理規定第2条)。
また、輸入食品の国外製造企業の所在国(地域)主管当局の推薦が必要な食品の範囲は、肉製品、乳製品、水産物、はちみつ製品、ツバメの巣などの品目に限定されていますが、管理規定における品目は、肉及び肉製品、ケーシング、水産物、乳製品、ツバメの巣及びツバメの巣製品、はちみつ製品、卵及び卵製品、食用油脂及び搾油原料、餡入り小麦粉製品、食用穀類、穀類製粉工業製品及び麦芽、生鮮及び乾燥野菜並びに乾燥豆類、調味料、堅果及び種子類、ドライフルーツ、未焙煎の珈琲豆及びカカオ豆、特殊用途食品、保健食品にまで広げられ、これらの食品については、所在国(地域)の主管当局から税関登録を推薦されなければなりません(管理規定第7条)。なお、所在国(地域)主管当局とは、輸入食品国外製造企業所在国(地域)において、食品製造企業の安全衛生監督を担う官庁部門を指します(管理規定第26条)。上記品目の関連企業は、主管当局である農林水産省経由で中国当局に登録手続を行い、また、その審査の結果及び登録番号の受領も、農林水産省を経由して申請者に通知されることになります。
(2)登録申請方法
管理規定は、食品品目の分類により、二つのパターンの登録形式を設けています。一つは、企業の所在国(地域)主管当局の監査・推薦による登録方法であり、もう一つは、企業が自ら登録を申請する方法です。
まず、前者の登録方法によるべき企業は、上記管理規定第7条に規定されている品目の食品を取り扱う企業であり、その申請を行う場合、所在国(地域)主管当局の推薦状、企業名簿及び登録申請書、企業身分証明書(例えば、所在国(地域)主管当局発行の有効な営業許可書)、推薦企業が管理規定を充足していることの声明、所在国(地域)による監査報告書を提出しなければなりません。また、必要に応じて、税関総署は、工場、冷蔵庫の平面図、工程フローチャート等、企業の食品安全衛生及び防護体制に関わる書類の提出を求めることができます(管理規定第8条)
次に、後者の登録方法は、上記管理規定第7条に挙げられた品目以外の食品製造企業について適用されるものであり、企業は自ら中国税関に登録するか、または、代理人に委託して登録申請する必要があります。企業は、登録の申請に際し、必要書類として、企業登録申請書、身分証明書(例えば、有効な営業許可証)、及び、企業が管理規定を充足していることの声明なども提出する必要があります(管理規定第9条)。
なお、税関総署は、リスク分析または証拠により、何れかの種類の食品のリスクが変化した場合には、当該食品の国外製造企業の登録方式及び申請資料を調整することができます(管理規定第6条)。
(3)評価審査の創設
税関総署は、書面検査、ビデオ査察、現場検査及びそれらを組み合わせた方法をもって、自ら評価審査するか、または、関連機構審査チームにそれを依頼し、その審査の結果により、登録を認めて、中国での登録番号を付与するか、または、登録できないという決定を行います(管理規定第13条、第14条)。
(4)登録の管理
登録の管理に関しては、登録の変更、継続、抹消、取消しが必要となる状況・条件について、詳細な規定が設けられています。
まず、登録を変更する場合として、登録有効期間内に輸入食品の国外製造企業の登録情報が変化した場合には、登録申請ルートを通じて、税関総署に変更申請を提出しなければなりません(管理規定第19条第1項)。税関総署は、その申請を評価した後、変更できると判断した場合、変更します(同第2項)。製造場所の移転、法定代表者の変更または所在国(地域)から付与された登録番号の変更の場合には、中国での登録番号は自動的に失効となり、改めて登録を申請する必要があります(同第3項)。
次に、継続登録については、登録有効期限が満了する3ヶ月ないし6ヶ月前から、登録申請ルートを通じて、税関総署に対して延長申請ができます(管理規定第20条第1項)。一定要件を満たしている企業については、最長5年まで延長されます(同第2項)。この場合には、中国国内の食品製造許可証と同じ有効期限になります。
また、登録済みの国外製造企業が、規定通りに継続登録を申請しないか、または、所在国(地域)主管当局若しくは国外製造企業自らが取消しを申請した場合には、税関総署は登録を取り消し、それを所在国(地域)の主管当局または国外製造企業に通知し、公布します(管理規定第20条)。
さらに、登録企業自身の原因で輸入食品に重大な食品安全事故が発生した場合、中国国内に輸出された食品につき、入国検査検疫中に食品安全問題が発見され、情状が深刻である場合、企業の食品安全衛生管理に重大な問題があり、中国国内に輸出する食品が安全衛生要求に適合するとの保証が得られない場合、登録後に登録要件を満たせなくなり、是正しても満たすことができなかった場合、虚偽資料の提出や隠蔽があった場合、税関総署による再検査・事故調査への協力を拒んだ場合、登録番号を有償若しくは無償で貸与、譲渡、転売、不正使用した場合には、税関総署は、登録企業の登録を取り消し、それを公告することになります(管理規定第24条)。
(5)登録番号の表記
登録企業は、食品の外部及び内部包装に、中国での登録番号または所在国(地域)主管当局が承認した登録番号を表示しなければなりません(管理規定第15条)。
(6)企業責任及びその主管当局の管理監督の強化
輸入食品の国外製造企業の所在国(地区)主管当局は、登録済み企業に対して有効な監督・管理を実施しなければならず、登録済み企業が継続的に登録要件に適合していないことを発見した場合には、直ちに監督・管理措置を講じ、当該企業の中国への輸出を停止し、登録要件に適合するまで改善しなければなりません(管理規定第22条第1項)。また、輸入食品の国外製造企業自らが登録要件に合致しないことを発見した場合には、自発的に中国への食品の輸出を停止し、直ちに改善措置を取り、登録要件に適合するまで改善しなければなりません(同第2項)。
3 おわりに
この新しい管理規定の公布により、今後、より多くの品目の食品の輸出が農林水産省を経て登録されることとなります。該当品目の製造企業は、それに向けた準備を整えることが要請されます。このような食品の輸出入に関する管理体制の強化が、食品の安全の確保に寄与することが期待されるところです。
ルノートに関連する法務
お問い合わせ
この記事に関するお問い合わせ、ご照会は以下の連絡先までご連絡ください。
松田綜合法律事務所
中国弁護士 徐 瑞静
info@jmatsuda-law.com
この記事に記載されている情報は、依頼者及び関係当事者のための一般的な情報として作成されたものであり、教養及び参考情報の提供のみを目的とします。いかなる場合も当該情報について法律アドバイスとして依拠し又はそのように解釈されないよう、また、個別な事実関係に基づく日本法または現地法弁護士の具体的な法律アドバイスなしに行為されないようご留意下さい。