Legal Note

リーガルノート

2024.09.10

2024-3-1 改正「合法伐採木材等流通及び利用の促進に関する法律 (クリーンウッド法)」の施行に向けて(第1回)

M&P Legal Note 2024 No.3-1

改正「合法伐採木材等流通及び利用の促進に関する法律
(クリーンウッド法)」の施行に向けて(第1回)

2024年9月10日
松田綜合法律事務所
弁護士 菅原清暁

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1.はじめに

令和5年4月26日、「合法伐採木材等流通及び利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(閣法第321条。以下「改正法」という。)が可決成立し、同年5月8日公布されました。また、同法は、令和7年4月1日に施行されます。

この改正法では、①国内市場における木材流通の最初の段階で事業を営む製材工場や輸入事業者といった川上・水際の木材関連事業者による合法性の確認等の義務づけ、②素材生産販売事業者による情報提供の義務づけ、③小売事業者の木材関連事業者への追加等の内容が盛り込まれたため、該当する各事業者は、令和7年4月1日までに、改正法に沿った体制を整えておく必要があります。

そこで、改正法の施行期日が迫りつつあるクリーンウッド法を理解して頂くため、本ニュースレター(第1回)において現行のクリーンウッド法による制度概要を概説したうえで、次回ニュースレター(第2回)にて改正法の内容及び各事業者において検討すべき対応について解説します。

2.現行クリーンウッド法の制定経緯

森林は、生物多様性の保全、土砂災害の防止、水源の涵養(かんよう)など多面的な機能を有しています。また、地球温暖化が深刻化する中、その原因である二酸化炭素の吸収・固定するという重要な役割を果たしています。

このような森林が違法に伐採され、その違法伐採による木材及び木材製品の流通することとなれば、森林が有する多面的機能に重大な悪影響を及ぼすとともに、木材市場における公正な取引を害するおそれもあります。

そこで、平成18年4月、「国等による環境物品等の調達に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という)に基づく基本方針が見直され、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」が策定、国や独立行政法人などが調達する木材等は、合法性、持続可能性が証明された木材等に限る措置が導入されました。

もっとも、日本の木材調達の95%は民間企業が占めており、民間企業による違法伐採木材の調達にも規制を及ぼす必要性が生じました。

そこで、民間企業も含めて、合法に伐採された木材及びそれを用いた製品の流通・利用促進を図るため、平成28年、「合法伐採木材等流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)が制定され、翌平成29年5月より施行されました。

3.クリーンウッド法の内容

(1)概要

この法律は、違法伐採を直接規制するのではなく、合法伐採木材等の流通及び利用を促進させることによって、間接的に違法伐採に対処しようとするものです。

具体的には、事業者に対しては、木材関連事業者を含む事業者一般に対して合法伐採木材等の利用する努力義務を課し(現行法5条)、また、木材関連事業者については国が定める基準に沿った合法伐採木材等の確認等を行うことを求めるとともに(現行法6条)、合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずる木材関連事業者は、第三者機関による登録を受けることができる制度(以下、登録を受けた木材関連事業者を「登録木材関連事業者」という。)を設けています(現行法第四章)。

また、主務大臣や国に対しては、主務大臣が流通及び利用の促進に関する基本方針を策定すること(現行法3条)、主務大臣が木材関連事業者の判断の基準となるべき事項を定めること(現行法6条)、主務大臣が木材関連事業者に対して指導・助言・報告徴収・立入検査を行うこと(現行法7条)などを規定しています。

 

(2)木材関連事業者が取り組むべき措置

ア「木材関連事業者」とは

クリーンウッド法は、「木材関連事業者」が合法伐採木材等の利用を確保するために取り組むべき措置を定めています。

ここで、「木材関連事業者」とは、木材などの製造、加工、輸入、輸出又は販売(消費者に対する販売を除く。)をする事業、木材を使用して建築物その他の工作物の建築又は建設をする事業その他木材等を利用する事業を行う者をいいます(現行法2条3項)。

また、木材関連事業は、流通の川上に位置する「第一種木材関連事業」と川中・川下に位置する「第二種木材関連事業」に分類されています。具体的には、「第一種木材関連事業」は次の事業をいい、第一種以外の事業が第二種に分類されます。

  • 樹木の所有者から丸太を譲り受け(購入)、加工、輸出又は販売する事業
  • 樹木の所有者自身が丸太の加工、輸出する事業
  • 樹木の所有者から丸太の販売の委託を受け、市場において販売する事業

 

イ 取り組むべき措置

木材関連事業者が合法伐採木材等の利用を確保するために取り組むべき措置には、①合法性の確認、②情報の提供、③記録の保存があり、これらの措置に関する判断基準は、「木材関連事業者の合法伐採木材等の利用の確保に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」に定められています(現行法6条)。具体的には、次の通りです。

① 合法性の確認

木材等の合法性の確認は、すべての木材関連事業者が証明書や国が提供する情報等をもとに実施することとなりますが、具体的な確認方法・内容について、「第一種木材関連事業」と「第二種木材関連事業」で異なります。

第一種木材関連事業者の場合は、樹木の所有者又は木材等を輸出する者に対し、樹種・原産地・法令に適合して伐採されたことの証明等に係る書類を提出させて確認し、合法性の確認ができない場合は追加の情報収集等を行うこととされています。

第二種木材関連事業者の場合は、木材等を譲り受ける際に提供された書類で確認することとされています。

② 情報提供

木材等を譲り渡す場合は、合法性の確認を行った旨及び合法性の確認ができた場合はその旨を記載した書類を提供することとされています。

③ 記録の保存

合法性の確認等に係る記録は、5年間保存することとされています。

 

(3)登録制度

合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講じている木材関連事業者は、登録実施機関(林野庁HPにてクリーンウッド法に基づく登録実施機関の一覧掲載 https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/jissikikan/jigyoushatouroku.html)に登録申請をし、その登録を受けることができます(現行法8条、11条)。

この登録を受けた木材関連事業者には、登録番号が発行され「登録木材関連事業者」という名称を取引先や消費者に示すことができるようになります(現行法13条)。これにより、企業のブランド向上、地域社会や消費者・一般事業者への信頼確保等が期待できます。

なお、登録を受けた者以外の者が、「登録木材関連事業者」という名称又はこれと紛らわし名称を用いた場合は、30万円以下の罰金に課されます(現行法37条1号。なお両罰規定は現行法38条)。

 

※第2回に続きます。 → https://jmatsuda-law.com/legal-note/2024-3-2/

 

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