Legal Note

リーガルノート

2023.01.16

2023-1-2 改正電気通信事業法によるCookie規制

M&P Legal Note 2023 No.1-2

改正電気通信事業法によるCookie規制

2023年1月16日
松田綜合法律事務所
弁護士 高垣勲

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1 はじめに

昨今、移動通信システムを始めとする通信技術の発展に伴い、スマートフォンを中心に、FinTech、シェアリング・エコノミー、AR/VR等の分野における新たなサービスが創出され、普及してきており、電気通信サービスは、自由な情報発信、人と人とのコミュニケーション、多様な情報の収集・利用の手段として、国民生活や社会経済活動にとって極めて重要な基盤としての役割を果たしています。総務省「令和2年情報通信に関する現状報告」によれば、今後更に、利用者が安心して利用でき、高い信頼性を有する電気通信サービス等の基盤の上で、国民一人一人を包含する形で社会全体のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、Society 5.0の実現などが進んでいくことが期待されており、安定的で信頼性の高い電気通信サービスの提供を確保していく重要性が高まっています。

このような社会的状況を踏まえ、令和4年6月13日、「電気通信事業法の一部を改正する法律」(令和4年法律第70号、以下「本法律」とします。)が成立し、同月17日公布され、令和5年6月16日までに施行される運びとなりました。

その改正の主たる内容については、総務省により、

(1) 情報通信インフラの提供確保、

(2) 安心・安全で信頼できる情報通信サービス・ネットワークの確保、

(3) 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備、

であることが説明されていますが、本稿では実務的に関心の高い⑵に関する問題、すなわち、第三者への情報送信に関する規律について、概略したいと思います。

 

2 外部送信に関する規律の背景

利用者に関する情報の適正な取扱いに係る制度導入の背景として、アプリやWebサイトを利用する際、Cookie(クッキー)などによって、利用者の意思によらず、その者自身の情報が第三者に送信されるというリスクを伴った外部送信関係が生じることがあります。

Webサイトを閲覧する場合を例にすれば、利用者がWebサイトのサーバに対し閲覧要求を行うと、そのサーバは、要求されたコンテンツとともに、外部送信のプログラムを利用者に送信する場合がありますが、利用者の端末では、それを受信して、当該プログラムが起動し、利用者の意思によらずに、端末に保存された利用者自身の情報(Webサイトの閲覧履歴等)を第三者に送信し、そして、当該第三者のサーバから、それが受信した利用者の情報に基づいて、広告等が配信されることがあります。

 

(総務省「改正電気通信事業法による外部送信規律について」より)

 

このように、利用者の意思によらない利用者自身の情報が第三者へ送信されるリスクの防止の要請が、改正電気通信事業法の改正の理由となっています。

改正法上、Cookieのような通信のことを、「情報を送信する司令としての通信」の意味で「情報送信司令通信」と定義しました。

当然、このCookieのような情報送信司令通信を行っている事業者は、電気通信事業法の登録や届出が必要な携帯会社や光回線の提供業者等の事業者に限りません。そのため、ブラウザ又はアプリを通じて提供されるスマートフォンやパソコンで利用されるメッセージ通信、検索サービス、SNS、オンラインショッピングモール、ニュース配信サイト等のサービスを提供する業者などなども、情報送信司令通信を利用する以上は、幅広く対象となる点は注意が必要です(第27条の12)

 

3 「外部送信」に関する規律の内容

上述のような「情報送信司令通信」に該当する場合の規制内容は、次の通りです。

  1. ①通知又は容易に知りうる状態に置く、②同意を取得する、③オプトアウト(本稿では省略)、のいずれかの措置が必要です。
  2. 通知又は容易に知りうる状態にすべき事項として、送信される利用者の情報に関する事項、当該情報の送信先の者の氏名・名称、当該情報の利用目的があります。
  3. 通知又は容易に知りうる状態に置く方法については、日本語での平易な表現による記載、適切な文字サイズでの表示、容易にアクセスできるようにすること、ポップアップによる通知やトップページ等での公表など、利用者が認識・理解し易い形で表示することが求められています。
  4. 同意の取得については、その都度画面上にポップを立てるなどして、(2)と同じ事項についての同意を取得することになると思われます。
  5. 通知又は公表を不要とする利用者に関する情報については、利用者の端末に適正に表示するための情報であり、また、サービスの提供のために真に必要な情報等であることが要求されます。例えば、ゲームサイトのコマンド情報の送信などが、サービス提供のために真に必要な情報に当たるとされております。
  6. この規制に違反した場合には、業務改善命令や氏名等の公表、罰金などの制裁があります。

 

4 おわりに

 電気通信サービスにおける利用者情報の保護のための法的規律については、いわゆるCookie(クッキー)に関する問題として、その規制の必要性が論議されてきました。その意味において、本法律の改正が必要とされる社会的背景は、必ずしも目新しいものではなく、また、日本に限られたものでもありません。そのため、大量の情報を取得・管理する電気通信事業者を中心に、諸外国における規制等との整合を図りつつ、利用者情報の適正な取扱いを促進するための新たな規律等が必要であり、電気通信事業を取り巻く環境変化を踏まえ、電気通信サービスの円滑な提供及びその利用者の利益の保護を図るため、電気通信事業者における対応として、利用者への電気通信サービス提供に際し、特に、情報を「外部送信」する指令を与える通信を送信する場合、利用者に確認の機会を付与することを主眼とした規律が本法律に導入されました。

本法律改正は、単なる個人情報保護法制を超えて電気通信を規律する法令として位置付けられ高く評価できる改正であると思われます。

また、施行が近づき、ガイドライン等が整備されましたら、改めて情報を整理したいと思います。

 

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