Legal Note

リーガルノート

2022.01.06

2022-1-2 中国の対外貿易第14次5か年計画

M&P Legal Note 2022 No.1-2

中国の対外貿易第14次5か年計画

2022年1月7日
松田綜合法律事務所
中国弁護士 徐 瑞静

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1 はじめに

従来より、中国は経済、社会政策を5か年計画で遂行しており、2020年には、貨物貿易総額世界第1位を維持し、サービス貿易総額も世界第2位となり、安定した発展を継続しています。そのような発展を背景として、商務部は、2021年11月23日、「対外貿易の高度質量発展に向けた第14次5か年計画」(以下、「計画」という。)を発表しました。2021年から2025年までがその期間となります。これは、2021年3月、北京で開催された第13期全国人民代表大会第4回会議が、今後の国民経済と社会発展の基本方針として採択した「第14次5か年計画及び 2035 年までの長期目標要綱」等に基づくものです。「計画」においては、5年間に、対外貿易発展の方式を転換し、知的財産権の保護、低炭素を着実に実施して、グローバルデジタル化発展のチャンスを掴み、それとともに、多国間における地域経済貿易協力の一層の緊密化を図り、世界貿易パートナーとの関係をより強化し、食糧、エネルギー資源、基幹となる技術や部品の輸入源を多様化し、貿易摩擦の対応、輸出の規制、貿易の救済等のリスク防止・コントロールシステムを健全化すること等が目標とされ、そのための法律、物流、決済等の更なる整序もその目標に含まれることとなります。具体的には、以下の10項目が励行されるべき重点任務とされています。

2 「計画」の重点任務

(1)貨物貿易構造の最適化

輸入元と輸出市場をさらに最適化するため、先進経済主体との貿易協力を深化させ、新興市場との貿易を積極的に開拓します。そのため、輸入関税を引き下げて、良質な消費財、先進技術、重要設備、部品、エネルギー資源製品及び農産物の輸入を増加させます。

(2)サービス貿易発展の促進

サービス輸出入構造を最適化するため、研究開発設計、省エネ・低炭素、環境サービス等の生産性サービス輸入を拡大します。サービス外注形態の改革と向上を加速させ、製造業との融合発展を推進し、新興技術を利用したデジタル製造外注を発展させます。

(3)貿易新業態の発展加速

越境電子商取引の健全な持続的発展を促進するため、優位産業特区を拡大し、海外倉庫企業が国内外資源を統合するサービスを奨励し、また、自由貿易試験区及びその他の条件を備えた場所での三国間貿易の発展を支援します。

(4)貿易デジタル化レベルの向上

国際貿易の「単一窓口」機能を開拓し、通関の知的化のため、輸出入許可証の電子化、金融サービスのオンライン化を推進します。また、遠隔医療、オンライン教育、観光、輸送、建築等の業界のデジタル化を積極的に支援します。

(5)クリーン貿易システムの構築

クリーンな低炭素に対応した貿易のため、その基準と認証システムの確立、クリーン貿易発展プラットフォーム、政策環境、協力機構を構築します。

(6)国内外貿易の一体化の推進

法令、監督管理体制、経営資質、品質基準、検査検疫、認可等における国内基準の国際基準への転化、国内外貿易一体化政策を推進し、外国貿易企業による多ルート国内販売市場を開拓するとともに、国内調達業者による積極的な国内製品の調達・輸出を推進します。

(7)対外貿易産業の円滑な運営の保障

食糧、エネルギー、資源の安全を保障するため、対外貿易企業と航空運送企業の国際輸送戦略協力を強化し、海外エネルギー資源の輸入保障能力を向上させます。外資の誘致と利用のための外商投資法と関連法令を全面的に実施し、外資参入禁止業種を削減します。

(8)「一帯一路」貿易円滑化協力の深化

中国と欧州との鉄道、港等の相互接続ネットワークの構築を加速させ、国際陸海貿易の新しい通路を構築するとともに、シルクロード電子商取引をグローバル化し、「一帯一路」電子商取引の大市場を建設します。

(9)リスク防止制御システムの強化

中央、地方、業界組織、研究機構と企業等の多主体が協力して貿易摩擦に対応する構造を形成し、貿易保障メカニズムを確立するため、輸出規制法及びその関連法令を整備します。とくに、国内外の知的財産権保護の国際協力を強化します。

(10)良好な発展環境の創出

貨物貿易分野の関税と非関税障壁の削減を推進し、サービス貿易分野の市場参入を緩和し、電信、インターネット、教育、文化、医療、金融等の分野の開放を着実に推進します。貿易の自由化と便利化のため、自由貿易試験区で率先して貿易参入の緩和を図ります。

3 おわりに

以上のように、対外貿易に向けられた新たな「計画」は、益々、国際的標準を目指して、高度化された目標を掲げる内容になっており、それらの目標が2025年までに、どれほど「計画」通りに達成されるかは、大いなる期待をもって注目されるところです。また、それと同時に、「計画」の実現の途を開くために必要な適正な法令の整備の如何についても、注視すべきであると言えるでしょう。その動向については、今後、丹念に追跡したいと思います。

 

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